よく聞かれる炎上案件について(2/2) -炎上案件との付き合い方
前回は、そもそもなぜ炎上するのかについて書きました。
今回はスタッフの立場として、炎上案件に入りたくない場合の立ち回り方、 炎上案件に入ることの是非等を考えてみたいと思います。
前記事を踏襲して書いているので、未読の方はそちらから読んでいただければと思います。
前記事はこちら
炎上案件やりたい?
炎上案件で毎日タクシー帰り的な話をすると、たいていの学生や後輩たちは
- えっ…とか、マジですか…的なドン引き
- やりたくねー的な反応
のどちらかの反応が返ってくることが多いです。
ここ最近はコンサルティングファームも労働時間を削減する方針なので、 このようなケースは減ってきましたが、それでもやっぱりまだあるのです。
炎上案件をどうやって見分けるか
炎上案件から逃げるためには、そもそも炎上案件かどうか判断することが必要です。
とはいっても、前回書いた通り、炎上とは案件が始まってから発生するので、案件に入る前は分からないのです。 もちろん、既に炎上している案件へのアサインの話は別です。
ではどうやって見分けるのか。
全記事のでは、分析の結果以下の要素がある案件が炎上しやすいとまとめました。
- 案件の目的がフワッとしており、スコープが広いと炎上しやすい
- クライアントの要求水準が高いと炎上しやすい
- クライアント側からの協力度合いが低いと炎上しやすい
- マネージャーがうまくコントロールできないと確実に炎上する
- スタッフのスキルが低い場合は炎上しやすい
このうち、案件開始前の段階のスタッフレベルで状況を把握できるものは、 4つ目と5つ目です。
1つ目は案件を取りに行っている段階では固まり切っていないことはまあまああるので、 アサイン面談の段階で確認しきれないことが多いです。
もちろん、確認することをお勧めしますが、提案中ではまだクライアントと合意できていないので、 覆ることはたくさんあります。
2つ目についても同様に、クライアントに会って仕事をしてみないとどの程度要求水準が高いクライアントか判断できませんので、なかなかアサイン面談の段階で把握するのは難しいでしょう。
過去に誰かが同じクライアントを経験していれば、わかる場合もあるかもしれませんが。
3つ目も2つ目同様、どの程度協力してもらえるかは案件開始前にはわからないことが多いです。 たいてい案件が始まってから、この話はXX部門に確認しないと、とか子会社に協力してもらわないといけないと言ったイレギュラーが起こります。 これらは基本的に外部のコンサルには予測困難です。
4つ目と5つ目はコンサルティングファーム内事情なので把握することができます。 ちゃんとコントロールできるマネージャーなのか、どんなメンバーで案件を回すのかをしっかり把握することが重要です。
どうやって回避する?
結論から言うと、
- 日ごろからの情報収集
- 断るだけのオプションを持っておく
の2点だと思います。
1.日ごろからの情報収集
意外と社内の評判というのは当てになるものです。 アサイン面談の前に、どんなマネージャーなのか、情報収集をしましょう。 日常的に社内のメンバーの情報を集めておくとかなり役に立ちます。
プロフィールを社内ポータルのようなもので確認したり、上司に聞いてみたり、一緒に仕事をしたことがある同僚に聞いてみたりしましょう。
特にどのような経歴で、どんな案件を経験しているのかは押さえておきましょう。 これから入る案件がそのマネージャーに全く経験がないものである場合、コントロールしきれない可能性が高まります。
下調べをしたうえで、アサイン面談に臨みましょう。
アサイン面談では、炎上という観点では最低でも以下を確実に確認しましょう。
- 案件の目的
- クライアントのカウンターパートの情報
- 案件のメンバー構成
案件の目的は言わずもがな。何を目指す案件で、その中でコンサルの役目は何か。 どのような仕事を期待されているのか。 それをどこまでクライアントと具体的に明確に合意できているのか。
クライアント側のカウンターパートの情報は分かる限りで聞いてみましょう。 この会社だとこんなイメージなんですけど、今回のカウンターパートもそんな感じですか?みたいに聞いてみると、何となくイメージがわきます。
メンバー構成は重要です。 評判のよくないスキルの低いメンバーがいるとしわ寄せが来やすいです。 どんな人がファームにいるのかは日ごろから情報を集めておきましょう。
その他、自分はどのような役目を期待されているのか等はきちんと聞いておきましょう。
このように情報を集めておくと、まずは燃えそうかどうか判断できます。
2.断るだけのオプションを持っておく
判断できたところで、断れないと結局回避できず、意味がありません。
断るためにはどうすればよいか。
これは結構シンプルで、他のオプションを用意しておくことです。 すなわち、2案件以上声がかかる状態にしておくのです。
そうすれば、これは炎上しそうだと思った時に、別の案件があるのでと言って断ることができます。 言い方は要注意ですが。
たいてい、僕はこういうキャリアプランを持っていて、そのためにこういうところがのばしたいと考えている。 だからこの(炎上しそうな)案件ではなくて、あっちの案件がやりたいと言えば大抵は納得してくれると思います。
そのためには、常日頃から、複数の上司とコミュニケーションをとっておくことが必要です。 自分がやりたいことを伝え、そのような案件があったら声をかけてもらえる関係を作ることです。
もちろん、実力やポテンシャルがあることをしっかりアピールしておくことも重要です。 口だけだと使ってもらえません。 日頃からきちんと仕事をこなし、できるやつだという評判を作っておくことが肝要です。
炎上案件はたまにやる分にはよい
ここまでずっと炎上案件をどう見分けて回避するかを書いてきましたが、別に炎上案件は必ずしも悪ではありません。
ずっとそればかりやっているのは、相当きついですからいつか潰れてしまうかもしれませんが、 適度にやる分には成長機会になってよいと僕は考えています。
炎上案件では、コンサルにとっての非常事態なので、メンバーは普段よりストレッチして仕事をフル回転でこなす環境が強制的に作られます。
その中でもがくことは確実に財産になると思うのです。
また、炎上案件を乗り越えると、そのチームのメンバーとは固いきずなが生まれます。 そのネットワークは非常に貴重な財産になります。
私も一年目の頃、どんどん増えるクライアントからの要求を上司がコントロールできておらず炎上した案件を経験しました。
本来はもっと上の人がやるタスクをやることになり、一人でウン兆円企業の執行役と対峙しました。 22歳のペーペーが圧倒的な威圧感と経験がある50歳くらいの執行役員と直接やりあって検討結果を報告するのです。
このとき僕はまだまだ未熟でしたが、がむしゃらに仕事をして検討結果を執行役員に提示、議論して経営会議資料を作り上げました。
始めはこんな若造で大丈夫か?という顔をしていて名前も呼んでもらえませんでしたが、 最終的には名指しでお礼をもらい、とても誇らしい気持ちになったことを覚えています。
当時はきつくて嫌になりましたが、振り返るととてもいい経験になっています。
そもそもコンサルティングの案件とは、クライアントにとっては日常業務の外側の非日常です。 上記の案件もその会社としては初の試みを実施する支援が案件の目的でした。 (こう書いてみると目的がフワッとしてますね。炎上する前触れです笑) 普段自分たちの日常業務でやらないところだからこそコンサルとやる意味があるのです。
自分たちの非常事態を捌けなくてクライアントの非常事態を捌くなど土台変な話なのです。 まさに医者の不養生。
終わりに
いかがでしたでしょうか。 ずいぶん長く書いてしまいました。
コンサルを目指す方の参考に、コンサルの方は「あーわかる」とか「ちがうな、私はこう思う」のきっかけになれば幸いです。